用語集

アービトラージ【arbitrage】
リスクなしで利益を上げることのできる取引のことで、裁定取引とも呼ばれる。価格形成が非効率な場合、しばしば価格が合理的価格から乖離する現象が起こり得るが、この時、割高な証券を売って、割安な証券を買っておき、乖離が修正された時点で反対売買を行えば、リスクなしで確実に利益を獲得することが可能となる。
アクティビスト【shareholders activist】
単に株式を保有するにとどまらず、経営陣に対して積極的に経営改善を促す等企業価値向上のためにさまざまなアクションを起こす投資家をいう。
アクティブ型【active (style)】
運用者が独自の相場観や分析を基に、ベンチマークを上回るパフォーマンスの獲得を目標とする運用スタイル。運用担当者の裁量による部分が大きいため、売買を通じた株価への影響力が大きい。最近は議決権の行使に対する意識も高まっている。
アセット・アロケーション【asset allocation】
資産配分のこと。幅広い資産に資金を分配しリスクをコントロールすることで、より安定的なリターン獲得を目指す。
アナリスト【analyst】
証券会社(系列調査機関を含む)や運用会社に所属し、企業分析を行って投資判断の推奨を業務とする人。
アナリスト・レポート【analyst report】
アナリスト・レポートとは一般に、アナリストが投資価値を求めるために企業や産業を分析したレポートのことをいう。バリュエーションに対する投資見解が述べられている。
アニュアル・レポート【annual report】
上場企業が事業年次終了後に、株主に対して決算内容を報告する年次報告書のこと。元々は外国人投資家向けに英文で作成されていたが、最近では日本語版を作成する企業も多く見られる。営業状況などの事業報告のほか、財務諸表およびその注記事項などで構成される。
委員会設置会社【companies with committees】
監査役制度に代わって、経営の監督機能と執行機能の分離を目的として設けられた新しい企業統治制度。委員会設置会社は指名、監査、報酬の3つの委員会を設置し、各委員会はそれぞれ取締役3名以上で構成され、その過半数は社外取締役でなければならない。また取締役会で選任した執行役に業務執行の権限を委譲し、取締役会は職務執行の監督を行う。監査役委員会の構成メンバーは執行役を兼務できず、監査機能の強化を図っている。
イベント・ドリブン戦略【event driven (strategy)】
企業の合併・買収、財務リストラ、資産の売却、破産等のイベントに伴って生じるミスプライシングを利用して利益を獲得しようとするヘッジ・ファンドの代表的な運用手法の一つ。被買収企業の株式をロングし、買収企業の株式をショートするM&Aアービトラージや、破綻状態にある企業の社債・株式等に投資するディストレスト証券が一例。固有の特別な事情のある企業に投資することは市場との関連性が少ないためリスクが減少することとなる。
インカム型【income (style)】
値上がり益よりも配当収益を追求する運用スタイル。これにはグロースとバリュータイプのスタイルがあり、一般的には優良株バリュータイプのインカムスタイルが多い。インカム・タイプの投資家は、同時に債券や高配当株式へも投資する傾向がある。
インサイダー取引【insider trading】
内部者取引のこと。企業の内部情報に接する立場を利用して、情報の公表前に当該企業の株式を売買する行為。証券市場の信頼を確保し、また投資家を保護することを目的に金融商品取引法によって規制されている。
インデックス型【index (style)】
あらかじめ決められたインデックスに忠実に連動することを目標とした運用スタイル。追随させるインデックスにはTOPIXや日経平均225、S&P500といった主要株式指数のほか、業種インデックス、スタイルインデックスといったものがある。「長期的には市場平均を上回る運用成績を上げようとすることは無益である。」との仮説に立つ効率的市場理論を信奉する機関投資家が、年金性資金等をインデックス・ファンドで運用することが多い。手法には完全法、層化抽出法、最適化法があり、それぞれインデックスに対する乖離(トラッキングエラー)を最小にすることを目指す運用が行われている。
運用スタイル【investment style】
一定の運用方針にしたがって運用を行うこと。アクティブ運用とパッシブ運用に大別される。
エマージング市場【emerging market】
BRICs、東南アジア、中南米、東欧など経済が急速に成長している新興諸国の市場のこと。
エンハンスト型【enhanced (style)】
エンハンスト運用は、トラッキングエラーをかなり抑え込みながら、超過収益獲得を目標とするアクティブ運用で、インデックスファンド+α程度のリスクリターンを目標とする。コア運用或いはアクティブ・クオンツ運用と位置づけられることも多く、年金資金等の、比較的売買回転率が小さい資金運用に採用される傾向にある。近年、独立した運用手法としての位置づけを確立しつつある。
大型株【large cap stocks】
企業規模等の大小により、大型株・中型株・小型株、もしくは、大型株・中小型株という区分がある。国や運用会社、個々のファンドにより様々な定義が存在しているが、一般的には、時価総額、あるいは売買金額が意味するところの流動性の大小を基準として用いている。ちなみに、東京証券取引所では、東証1部上場企業について大型株は、TOPIX 100の構成銘柄(時価総額・流動性の高い上位100社)と分類している。
海外ロードショー【overseas IR roadshow】
海外ロードショーとは、企業のトップなどが海外の株主や投資家を直接訪問し、自社の決算内容や経営戦略などを説明する活動のことをいう。国内株式市場における外国人の影響力が強まっていることから、積極的に実施する企業が増えている。
ガバナンス・ファンド【governance fund】
企業のコーポレート・ガバナンスの状態に着目して投資を行うファンド。ガバナンスの優れた企業に投資するファンドと、ガバナンスが悪く業績が低迷している企業へ投資して、経営改革を迫り企業価値を向上させることで利益を得ることを目的とするファンドがある。
株主総会【annual general meeting (AGM)】
株式会社の最高意思決定機関であり、議決権を有する株主がこれに参加する。各社の事業年度末から3ヵ月以内に開かれる総会は、定時株主総会という。必要に応じて開催されるのが、臨時株主総会である。株主は持ち株数に応じて議決権を持ち、取締役や監査役、会計参与等の選任、定款の変更、会社の解散・合併など、会社運営に必要な重要事項が決議される。
株主ターゲティング【targeting shareholders】
企業が株主の新規開拓をするために、想定した一定のシナリオに沿って見込みのある投資家にアプローチすること。
監査役会設置会社【companies with boad of auditors】
監査役会を置く株式会社のこと。大会社である公開会社は、委員会設置会社である場合を除いて監査役の設置が義務づけられている。監査役会は3名以上の監査役で構成され、そのうち半数以上は社外監査役でなければならない。
機関投資家【institutional investor】
定義は明確ではないが、一般的に、投資顧問会社、生命保険会社、損害保険会社、信託銀行、投資信託会社、年金信託など、法人投資家のことを総称している。機関投資家はまとまった資金を運用するため、動かす金額が大きく、市場への影響も大きい。内外の投資家を区別するため、国内機関投資家、海外機関投資家などという。
企業年金【corporate pension】
民間が運営する私的年金の一種。企業が独自に設立し、厚生年金に対して独自の上乗せ部分を支給する仕組み。
議決権【voting rights】
株主の権利の1つで、株主総会において経営方針等の議案に対して投票することで意思表示を行うことができる。議決権は1人の株主につき1個ではなく、持っている株式の数で決まる。
議決権行使ガイドライン(議決権行使基準)【proxy voting guideline】
運用機関が株主総会の議決権行使の際に上程議案を評価するために用いる指針。ISSの策定した議決権行使基準が各運用会社で参考にされることが多い。
キャッシュフロー【cashflow】
企業の事業活動の結果、生み出される資金の増減。営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローに分類され、資金の収支を表す。
クオンツ型【quants (style)】
銘柄選別、アセット・アロケーション、ポートフォリオ構築という3つの投資決定プロセスにおいて、統計的な手法に依拠した運用を行うスタイル。システム運用、エンハンスト運用と同義の場合も多く、ファンド・マネジャーの投資判断上のサポートツールを指すこともある。計量的に重要な要素としては、資産価値、資本コスト、売上・費用・利益率の過去および将来の傾向、また、経済、短期金融市場、株式市場などのマクロ要素等が挙げられる。
グリーンメーラー【greenmailer】
標的企業を経営する意思が無いにもかかわらず、株式を買い集め、発行会社やその関係者に高値での買い取りを迫る敵対的買収者。英語のブラックメール(脅迫状)と、ドル紙幣の色が緑色であるのをかけた表現といわれる。
グロース/インカム型【growth/income (style)】
グロースの運用スタイルで、値上がり益よりも配当収益を追求する運用スタイル。
グロース/クオンツ型【growth/quants (style)】
現在の株価が短期的に見れば割高であっても、将来の高い収益予想に基づいて投資を行うスタイル。長期的に見た企業の成長性や収益性を主眼に選定した企業に投資するクオンツアクティブ運用手法の一つ(グロースの項参照)。銘柄選別手法において、スクリーニングからユニバース設定、銘柄選択、ポートフォリオ構築に至るまでクオンツ手法(統計的手法)を用いるスタイルを指す(クオンツの項参照)。
グロース型【growth (style)】
成長性や収益性を主眼に選定した企業に投資するアクティブ運用の一種。成長による企業価値の増大を背景とする、長期的に見た株式の値上がり益の獲得を目的とする投資手法。現在の株価が短期的に見れば割高であっても、将来の高い収益予想に基づいて投資を行う。企業ライフサイクルで成長期にある企業に投資を行い、組入銘柄には、高PERで更なる成長へ向けた内部留保により配当性向が低い、などの傾向がある。成長性にかげりが見られると保有株式を一気に売却することもある。
グローバル・マクロ戦略【global macro (strategy)】
為替、金利等のマクロ経済のトレンド分析に基づき、グローバル市場の株式、債券、通貨、先物等に投資することで利益を獲得しようとするヘッジ・ファンドの代表的な運用手法の一つ。1990年代に世界の金融市場に大きな影響を与えたジョージ・ソロスのクオンタム・ファンドが同手法を用いたファンドとして有名。
コア型【core (style)】
一般的にはパッシブコアと呼ばれ、エンハンスト運用とほぼ同義の運用手法の一つ。インデックス運用のトラッキングエラーと比較して小幅の追加リスクをとることで超過収益を狙うのが特徴。資金回転率が比較的低い年金性資産の運用や、大型株運用で見られる傾向がある。また、ベースにはクオンツ的な手法を用いることが多い。
公的年金【public pension】
国が運営する年金の総称。全国民共通の基礎年金で自営業者が加入する「国民年金」と、上乗せ分である、民間会社員らを対象とする「厚生年金」、公務員らを対象とする「共済年金」からなる。
小型株【small cap stocks】
企業規模等の大小により、大型株・中型株・小型株、もしくは、大型株・中小型株という区分がある。国や運用会社、個々のファンドにより様々な定義が存在しているが、一般的には、時価総額、あるいは売買金額が意味するところの流動性の大小を基準として用いている。ちなみに、東京証券取引所では、東証1部上場企業について小型株は、TOPIX Smallの構成銘柄(500位~)と分類している。
コーポレート・ガバナンス【corporate governance】
「企業統治」と訳されるが、明確な定義はない。経済産業省「企業行動の開示・評価に関する研究会」が2005年7月に公開した指針においては、コーポレート・ガバナンスは「企業経営を規律するための仕組」と定義されている。
三角合併【forward triangular merger】
親会社の子会社が別の企業を吸収合併する際、親会社の株式を被買収会社に交付する合併手法。
市場型【market-oriented (style)】
運用者が独自の相場観(モデル)を基に、ベンチマーク(市場)を上回るパフォーマンスの獲得を目標とする運用スタイル。システムやクオンツを用いず、運用者の裁量による古典的アクティブ運用をさすことが多く、主に大型株に投資を行う国内機関投資家に多い。アクティブ、ジャッジメンタル、或いはフリースタイルと呼ばれることもある。
システム型【system (style)】
パッシブの範疇に属し、主として投資決定プロセスの全て或いは一部において、何らかの銘柄選別システム、アロケーション決定システム等を使用し、そのアウトプットに全面的に依拠した投資を行うスタイル。何らかの投資判断システムへの依拠度合いが高く、運用者の判断が介在する余地の低いポートフォリオを指すことが多い。ときに、クオンツ、エンハンストと同義であることもある。
実質株主判明調査【shareholder identification】
機関投資家が保有する株式は、通常「信託口」ないしカストディアンの名義で株主名簿に記載される。そのため、発行会社が株主名簿を見ただけでは、実際に投資や株主としての権利を行使する「実質株主」を特定できない。実質株主判明調査は、発行会社が機関投資家株主の全体像を把握するために行う調査で、近年増加傾向にある。
社外監査役【outside corporate auditor】
社外監査役とは、就任前に会社またはその子会社の取締役・会計参与・執行役・その他の使用人となったことがない監査役をいう。なお、大会社かつ公開会社(委員会設置会社を除く)の場合、監査役会の設置と3人以上の監査役が必要となる。さらに、監査役の半数以上は社外監査役でなくてはならない。
社外取締役【outside director】
社外取締役とは、過去において会社やその子会社の使用人等でなく、現在においてもその会社の業務を執行しない取締役で、中立的な立場から主として取締役会における監視機能を担わせるものをいう。なお、委員会設置会社に移行するためには、各委員会の委員の過半数は社外取締役で構成しなければならない。
ステークホルダー【stakeholder】
企業に関する利害関係者のこと。株主や債権者のほか、取引先、従業員、消費者、地域社会など、広い意味で直接的、間接的に利害を有する者を総称していう。
ストック・オプション【stock option】
一定数の株式を一定価額で会社から買い受けることのできる権利。株価が行使価格を上回ればその差額がそのまま報酬となるため、業績向上に向けて職務に精励させるインセンティブとなる。
絶対リターン追求戦略【absolute return (strategy)】
近年になり急速に伸びつつある投資手法の一つで、従来の資産運用が相対的なベンチマークをもった投資であるのに対し、明確な相対ベンチマークを持たずリターンの絶対追求を目指す運用スタイルである。株式の買い玉と売り玉を同時に立てるマーケット・ニュートラル或いはロングショートと呼ばれる手法が代表的でデリバティブを活用したものまで様々な手法が存在する。ヘッジ・ファンドが多用し、リスクを低く抑えながらリターンを追求する運用形態である。
セルサイド【sell-side】
セルサイドとは証券を売る側、すなわち証券会社のことを指す。証券会社に所属するアナリストをセルサイド・アナリストという。
第三者割当増資【allocation of new shares [stocks] to a third party 】
特定の第三者に新株引受権を与えて新株式を発行すること。業務提携先や取引先との資本関係強化や会社再建の目的が多いが、最近は買収防衛策の一環として採用する企業が増えている。ただし、既存株主の利益を損ねるような場合には、商法の規定により株主総会でその理由を明確に開示し特別決議にかける必要がある。
大量保有報告書【large shareholding report (5%rule)】
上場企業の株式等の保有者が、保有割合が発行済株式総数の5%を超えた場合、その後1%以上変動した場合、保有目的が変わった場合に、5営業日以内に、氏名、保有株数、目的などを内閣総理大臣あてに報告するために、財務省に提出する書類のこと。機関投資家には報告時期における特例規程が設けられている。
中型株【middle cap stocks】
企業規模等の大小により、大型株・中型株・小型株、もしくは、大型株・中小型株という区分がある。国や運用会社、個々のファンドにより様々な定義が存在しているが、一般的には、時価総額、あるいは売買金額が意味するところの流動性の大小を基準として用いている。ちなみに、東京証券取引所では、東証1部上場企業について中型株は、TOPIX Mid 400の構成銘柄(101~500位)と分類している。
敵対的買収【hostile takeover】
買収者が買収対象企業の取締役会の同意を得ることなく仕掛ける買収のことで、日本では通常、公開買付により実施される。買収者は、対象会社の経営権を支配できる議決権を取得するために、発行済株式総数の過半数、もしくは株主総会の特別決議を拒否できる3分の1超の取得を目指すことが多い。
適時開示【timely disclosure】
投資判断に重要な影響を与える情報を適時適切に公表すること。東京証券取引所では、適時開示規則に基づき適時開示することを上場会社に義務付けている。
投資顧問会社【investment advisory firm】
「投資顧問業」とは、株式などの有価証券に関する投資判断について、報酬を得て、専門的立場から、投資家に助言を行う業務のことで、「投資顧問会社」これを手掛ける企業のことである。なお、投資顧問業を営む業者は、「投資一任業者」と「助言業者」の2つに分類される。
投資ファンド【investment fund】
投資を目的として複数の投資家から集めた資金をひとまとめにした基金。専門家によって企業の株式や商品などに投資され、そこから得られた利益は配当や売却益として投資家に還元される。しかし最近では、特に経営に関与する目的で企業の株式を取得し、株式価値を高めた後、その株式を売却するなどして投資利益を得るファンドを意味することが多い。
東証独立役員【(TSE) independent director/auditor】
一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役のこと。東京証券取引所の企業行動規範の「遵守すべき事項」として、上場企業において1名以上の確保が義務付けられている。
特別決議【special resolution】
特別決議とは、総議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席し、その出席した株主が有する議決権の3分の2以上の賛成で成立する決議のこと。ただし、別途定款定めることにより、定足数は3分の1を下回らない範囲で、また決議要件は3分の2以上の割合にのみ設定できる。
日経平均株価【Nikkei–225 stock average】
TOPIXと並ぶ日本の株式市場における代表的な株価指数の一つで、東証プライム上場企業のうち代表的な225銘柄で構成される株価平均指数。
パーセプション・ギャップ【perception gap】
認識のずれのことをいう。企業が思い描く自社の認識と、投資家の企業に対する評価というのは必ずしも一致せず、IR活動を通じて認識ギャップを解消することが適正な企業価値を維持する上で重要と考えられている。
バイサイド【buy-side】
バイサイドとは証券を買う側、つまり投資家サイドのこと。一般的に機関投資家を指す。
買収ファンド【buyout fund】
投資家から資金を集め、企業の株式を取得して買収企業の経営に直接関与して経営改革を行い、企業価値を高めたうえで、株式公開や転売により高いリターンを得ることを目的とするファンド。
買収防衛策【anti-takeover measure [takeover defense measure]】
敵対的買収に対して企業側が導入する防衛策。様々な手法があるが、日本では事前警告型買収防衛策が一般的。
売買回転率【turnover】
株式の流動性を表す指標の一つで、どの程度の頻度で売買がなされているかを表す。
派生商品型【derivative products (style)】
主として、株価指数先物、株価指数オプションを積極的に利用してリターンの追求を目指すポートフォリオ。
パッシブ型【passive (style)】
アクティブ運用とは対照的に、運用者の主観を入れずに、ベンチマーク(市場)に忠実に連動させることを目標とする運用スタイル。市場やベンチマークと同じようなリスク・リターンのポートフォリオを構築して運用が行われるインデックス手法が典型例。IR活動を行なっても投資判断に影響を与えることは出来ない。議決権の行使に対する意識が高いうえ一般的に保有株数が多いため、議案の成否に対する影響力が大きい。
バランス型【balanced (style)】
広義には、株式・債券等のリスク/リウォードの異なる資産をミックスさせながら、各資産において分散投資を行い、リスクの低減を図りながら長期的なポートフォリオ運用を行う手法。各種スタイルが存在し、TAA型、DAA型、GTAA型、スタティック型等が存在する。組入資産の組み合せ、国内・海外の組み合わせにより、さらにバリエーションがある。顧客の基本資産配分(ガイドライン)或いは複合ベンチマークに対して超過収益を追求するか否かにより、アクティブ/パッシブのバランス型が存在する。クオンツのバランス型もある。
バリュー/クオンツ型【value/quants (style)】
一般的に現在の株価が理論値より割安と判断される銘柄に投資を行い、株価が理論値へ収束する際の値上がり益を狙うクオンツアクティブ運用の手法の一つ(バリューの項参照)。銘柄選別手法において、スクリーニングからユニバース設定、銘柄選択、ポートフォリオ構築に至るまでクオンツ手法(統計的手法)を用いるスタイルを指す(クオンツの項参照)。
バリュー型【value (style)】
一般的に、現在の株価が収益力や純資産などから算出する理論値より割安と判断される銘柄に投資を行い、株価が理論値へ収束する際の値上がり益を狙うアクティブ運用の一種。割安性に対する定義の仕方は投資家により異なる。極度に高いリターンを上げることを目的としたヘッジ・ファンドの一部(アクティビストなど)も究極のバリュー投資家といえる。
ファクト・ブック【fact book】
各種財務指標・経営実績に関する数値が、投資分析用に、グラフや図などと一緒に長期時系列(通常10年)でまとめられたデータ集のこと。企業の業績・財務内容を知る際に、長期ベースのデータを記載しているので、単年度ベースのアニュアル・レポートを補完する役割を果たす。
ファンド・マネジャー【fund manager】
生命保険・運用会社等に所属し、投資信託や年金資産などまとまった資金の運用を行う専門家のこと。
普通決議【ordinary resolution】
普通決議とは、総議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席し、その出席した株主が有する議決権の過半数の賛成で成立する決議のこと。ただし、定款で定めることにより別段の定めを設けることができる。
フリー・キャッシュフロー【free cashflow】
企業が生み出す資金から現状生産能力維持のために必要とされる設備投資資金を差し引いた余剰金を指す。営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いて残ったキャッシュフロー。
ブル・ベア型【bull bear (style)】
主として株価指数先物、株価指数オプションを積極的に利用して、ベンチマーク指数の動きにレバレッジを効かせることによりリターンの獲得を目指すタイプの運用手法で、広義には派生商品型の運用の範疇に属する。投資信託で運用されることが多い。具体的には、現物資産として、国債や現金といったリスクフリーの資産を保有しながら、ブル型では先物等の買建玉を、ベア型では売建玉を行い、インデックスリターンの何倍といったリターンの獲得を目指す。ベア型では相場が下がれば基準価額が上昇する。
ブレンド/クオンツ型【blend/quants (style)】
相場循環においては、その時々においてグロース銘柄主導相場、バリュー銘柄優位相場といった局面が出現する。その局面に合わせポートフォリオのグロース・バリューの構成比率を機動的に変動させるスタイル。特にその銘柄選別手法において、スクリーニングからユニバース設定、銘柄選択、ポートフォリオ構築に至るまでクオンツ手法(統計的手法)を重視するクオンツアクティブ運用手法の一つ(クオンツの項参照)。
ブレンド型【blend investment (style)】
スタイルカテゴリーでは、グロースとバリューとの混合で構成されたポートフォリオを指す。相場循環においては、その時々においてグロース銘柄主導相場、バリュー銘柄優位相場といった局面が出現する。その局面に合わせポートフォリオのグロース・バリューの構成比率を機動的に変動させるスタイル。構成比率変更や銘柄選別をファンド・マネジャーがアクティブに行う手法とクオンツ手法をベースにしたものが主流。オポチュニスティックというスタイル名で呼ばれることもある。
プロキシー・ファイト【proxy fight】
株主総会において発行体企業と株主提案を行う実質株主との間で一般株主の議決権行使の委任状獲得を巡って繰り広げられる争奪戦のこと。日本では、村上ファンドが東京スタイルを相手に行った委任状争奪戦やTBSと楽天との間で繰り広げられた事例等がある。
ヘッジ・ファンド【hedge fund】
特定少数の投資家から資金を集めて運用する私募の投資ファンドのこと。投資戦略にもよるが、概して空売りを積極的に利用することで、絶対リターンの獲得を目標とする。公募型投資信託と異なり、厳格な各種規制が要求されていないため、運用の自由度が高い。
ポイズン・ピル【poison pill】
買収防衛策の一つ。あらかじめ既存株主に新株予約権を付与しておくことで、敵対的買収者が一定割合の株式を取得した場合には、買収者以外の株主に新株が発行され、買収者の株式保有割合を低下させることにより、買収者の株主権の縮小を狙ったもの。
ポートフォリオ【portfolio】
元々は「仕分けされた書類入れ」のことだが、転じて、運用会社が保有する株式、債券、商品等、性格の異なる投資資産の組合せを指す。運用ポートフォリオとも呼ぶ。
ポートフォリオ・マネジャー【portfolio manager】
運用会社において、実際にファンドの運用を行っている人。ファンド・マネジャーともにいう。
ボラティリティ【volatility】
株価や指数等の価格変動率のこと。価格変動率は過去データを統計処理して計算され、この変動率の大きさがリスクの大きさを表す。ボラティリティ(変動率)が大きければハイリスク、小さければローリスク、となる。
ホワイト・ナイト【white knight】
M&A用語の1つ。直訳すると「白馬の騎士」。敵対的買収を仕掛けられた企業に対して、被買収企業の経営者の意向を尊重して友好的な買収案を提案する者をいう。
マーケット・タイミング【market timing】
市場動向に応じて、投資のタイミングを見計らう運用手法。
マーケット・ニュートラル型【market neutral (style)】
近年になり急速に伸びつつある投資手法の一つで、従来の資産運用が相対的なベンチマークを基にした投資であるのに対し、明確な相対ベンチマークを持たずリターンの絶対追求を目指す運用スタイルである。株式の買い玉と売り玉を同時に立てるマーケット・ニュートラル或いはロングショートと呼ばれる手法が代表的でデリバティブを活用したものまで様々な手法が存在する。ヘッジ・ファンドが多用し、リスクを低く抑えながらリターンを追求する運用形態で注目される。
ミューチュアル・ファンド【mutual fund】
複数の投資家が資金を提供し共同で運用を行うオープンエンド型投資信託のことで、米国内で設定・販売されているものをさすことが多い。英国では「ユニット・トラスト」ともいう。プロのファンド・マネジャーがファンドに集まった資金を様々な株や証券に投資・運用することで、投資家一人が少ない銘柄の株に投資するよりもリスクを軽減できるなどのメリットがある。
持ち合い【cross shareholdings】
企業や金融機関が、純粋な投資目的ではなく政策的に互いの株式を相互に持ち合う関係のことで、日本特有の慣行といわれているがドイツでも散見される。グループの結束強化、取引関係の強化、株価や株主の安定化、敵対的な買収の回避等のために行われてきた。1990年代以降はバブル経済崩壊後の保有株式価格の下落による企業経営の圧迫もあり、金融機関を中心に解消されていったが、近年は外国資本による日本企業の買収や経営参画が活発化してきており、これに対する防衛策として見直す動きもある。
モメンタム型【momentum (style)】
実績利益、利益予想、株価が市場や同一セクター内の他の銘柄よりも速い速度で成長している銘柄へ投資するスタイル。モメンタム・タイプの投資家は、利益が上方修正されたり、予想を上回った銘柄へ投資するのが一般的である。短期的なことに焦点を当てているために回転率が非常に高く、このため、少しでも失望を誘うものや減速を示すものが現れると売却する傾向がある。
有価証券報告書【financial report】
有価証券の発行企業が企業内容を外部へ開示する報告書。上場会社などは毎期事業年度終了後3ヶ月以内に金融庁に提出することが義務付けられている。
レラティブ・バリュー戦略【relative value (strategy)】
価格特性の類似した証券のうち、相対的に割安な証券のロング・ポジションと割高な証券のショート・ポジションを組み合わせることで、一時的なミスプライシングが解消される過程で利益を獲得しようとするヘッジ・ファンドの代表的な運用手法の一つ。債券アービトラージやCBアービトラージが一例。
ロング/ショート型【long/short (style)】
割安と判断される証券のロング・ポジション(買い持ち)と割高と判断される証券のショート・ポジション(空売り)を組み合わせたポートフォリオを構築するヘッジ・ファンドの代表的な運用手法の一つ。マーケット全体の変動による影響をヘッジするというメリットを享受しつつ、ミスプライシングの解消による収益獲得を狙うことができる。
10%テスト【10%test】
日本の株式市場のみに上場している企業同士であっても、株式交換による合併等の組織再編取引において米国株主の保有が10%を越えると、米国会計基準に沿った財務書類をSECに提出しなくてはならない。ただし、実質株主ベースで米国居住株主が10%以下の場合は報告義務が免除されるため、その免除の可否を判定するためのテスト。
10Q【10–Quarter】
米国の証券取引所に上場する企業が証券取引委員会(SEC)に提出を求められている四半期報告書のこと。10K(財務諸表等の年次決算開示様式、年1回提出)ほど包括的な内容ではなく、監査も不要。
13F【form 13F】
米SECによる開示規制の1種。米国で投資活動を行い、1億ドル以上の運用資産を有し、SECに登録している機関投資家は、四半期毎に運用するポートフォリオを所定の様式(Form 13F)でSECに届け出ることが義務づけられている。
CSR【Corporate Social Responsibility】
企業の社会的責任。企業が利益を追求するだけでなく、事業活動において様々なステークホルダー(顧客、株主、従業員、地域社会、他)との関係を重視することで社会的責任を遂行しようという活動。その活動は、高品質な製品やサービスの提供、社会倫理にかなう活動、環境問題への取り組み等が挙げられる。これによって企業イメージの向上や業務プロセス改善によるコストの低減等のメリットも期待される。
GARP型【growth at reasonable price (style)】
基本的には成長株投資であるが、将来の収益予想を勘案したうえで割安と考えられる銘柄に投資を行うことにより、成長性の高い銘柄へ適切な価格で投資する運用手法。バリュエーションを絶対的水準で測るのではなく、成長性を考慮した上で適正水準を判断する。簡単な考え方の代表例としてはPERをEPS成長率で割ったPEGがある。利益成長率との相対で見たPERの割安割高を測る。運用会社により他に様々な手法が存在する。Growth At Reasonable Priceの頭文字を取ったもの。
IPO【initial public offering】
Initial Public Offeringの略。証券取引所に上場していない未公開企業が不特定多数の投資家から資金調達を行うために株式公開することをいう。
ISS【ISS(Institutional Shareholder Services)】
Institutional Shareholder Servicesの略。株主総会の上程議案を評価する議決権行使アドバイザーの一つで内外の機関投資家に相応の影響力を有する。
IR【investor relations】
投資家向け広報と一般に訳されている。しかしながら、その機能は広報に留まらず、企業が自社の適正な株価を実現するために、株主や投資家に対して行う戦略的な活動を意味している。企業は、様々なステークホルダーと良好な関係を維持しなければならない。とりわけ上場会社は、IR活動を通じて既存株主、投資家及びアナリストとのコミュニケーションを持ち、信頼関係を構築する必要がある。
M&A【mergers and acquisitions】
Mergers And Acquisitionsの略で、企業の買収・合併のことをいう。企業が他の企業と合併したり、事業部門の一部を買収することで事業規模の拡大、多角化、国際化に対応することをいう。
MBO【management buyout】
Management Buy Outの略。現経営陣が現在所属している企業全体や事業部門の事業継続を前提に、既存株主から株式を買い取り独立すること。長期的視点に立った経営建て直しや敵対的買収の究極の防衛策として実施される。経営陣がファンドと共同して実施するケースも多い。
ROE【return on equity】
Return On Equityの略。当期利益を株主資本(=純資産)で割った比率で、資本効率性を見る指標。数字が高いほど効率的な運用をされているといえる。
SEC【(U.S.) securities and exchange commission】
米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)の略称。証券取引関連の法規を司る機関で、1934年に設立された。
SRIファンド【SRI (socially responsible investment) fund】
社会的責任投資。投資先企業を選定するにあたり、通常の財務分析等に加えて、コンプライアンス、環境・人権への配慮、地域社会貢献等において「社会的責任」に配慮した経営を行っているか否かを基準にして投資を行うファンド。
SWF【Sovereign Wealth Funds】
各国の政府や中央銀行が出資する公的投資機関が運用するファンドで、「政府系ファンド」とも呼ばれる。SWFを積極的に運用している国は、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、中国、シンガポール等があり、豊富な石油・天然ガス資源や貿易黒字等により蓄積された資金を財源とする。
TAA型【tactical asset allocation (style)】
TAA型はタクティカル・アセット・アロケーション型の略称で、バランス型の主要スタイルを構成する。TAA型にはさらに、ライフサイクル型とスタティック型が存在する。ライフサイクル型は、投資期間の経年により、顧客の基本資産配分或いは予め決められた複合ベンチマークの各資産構成比率が変更され、経年するにつれ安定資産の比率が高まる手法である。スタティック型は、投資期間を通じ各資産の構成比率を一定に保つ手法である。更に、これらのベンチマークに対して、アクティブなアセット・アロケーション等で超過収益を狙うか否かで、アクティブとパッシブに分けられる。
TOB【takeover bid】
Take Over Bidの略で株式公開買付のこと。経営権取得等を目的として、不特定多数の株主に対して銘柄、買い付価額、株数、期間を公告し、当該企業の株式を取引所外で購入する行為をいう。
TOPIX【TOPIX(Tokyo Stock Price Index)】
東証株価指数の略称。日経平均株価と共に日本株のベンチマークとして普及している。2022年4月1日までは、東証一部上場銘柄の浮動株ベースの時価総額を1968年1月4日時点の時価総額を100として指数化していた。2022年4月4日の新市場区分施行に伴い、2022年4月1日の構成銘柄を同年4月4日以降も選択市場(プライム、スタンダード、グロース)にかかわらず継続採用し、一方で、流通株式時価総額100億円未満の銘柄については、段階的にウエイトを低減することとした。また、TOPIXへの追加については、プライム市場への新規上場・市場区分の変更銘柄などが対象となる。